NIHON KOGEIKAI
第四十四回 日本伝統工芸展
受賞作品解説


3-00070-000-044-00422

日本工芸会保持者賞

ちんきんうるしばこ「いざよい」
沈金漆箱「十六夜」

前 史雄(まえ ふみお)


 従来、数多くの沈金技法を駆使して克明な自然描写を試みた作者が、技巧をおさえ、
心象風景の表現をめざした。かすかな月明かりに浮かびあがる萩の群生。
萩は線彫り、コスリと線の重ね彫り、そして点彫りで形どり、白金と松煙墨で彩色した。
その中に配した銀の露玉で月明かりを示すが、月そのものは蓋表には表さず、
上や右横の黒の余白で夜の闇を暗示する。
十六夜のためらう月は、箱の身の立上がりの内側におぼろに描く。
幻想的な余韻のこもった世界の表現に成功するとともに、器を用いる楽しみの効用も忘れていない。

(第四十四回 日本伝統工芸展図録より)



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製作著作
社団法人日本工芸会
1997