NIHON KOGEIKAI

伝統工芸なぞなぞ百科

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(1)鋳型制作の工程(A)

作品の原型をつくる

「鋳金」が他の金工技法と異なる点は、いきなり金属に手をくわえるたり加熱するのではなく、土や粘土、石膏、蝋(ろう)などであらかじめ作品どおりの原型をつくり、これをもとにして鋳型(いがた)を制作し、その鋳型に溶かした金属を流し込むという点です。金属は、加熱すると流体になり、常温にもどると固まりますが、この特性をいかした技法といえます。齋藤さんは、鋳金のなかでも、とくに「蝋型鋳金」(ろうがたちゅうきん)の技法をつかいます。蝋型鋳金では、作品の厚み部分(金属を流し込むためのすきま)を「蝋」(ろう)でつくります。あとで鋳型が過熱されたときに、この蝋の部分は融けて外に出てしまいます。これを脱蝋(だつろう)といいますが、これで鋳型の完成となります。齋藤さんは、作品の原型をつくるとき、まずかたちにこだわります。そして、壷や花器などの作品の表面には、古代の文様や、海外、とくに中国、中近東、エジプトなどで得たアイデアに基づく現代的文様をつけることが多いようです。鋳金のすべての工程のうち、もっとも重要なのが、鋳型の制作といえます。

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写真は、齋藤さんの工房(東京都練馬区)の内部です。お一人で、鋳金の全工程をこなすために、必要な道具、材料がすぐ手の届く範囲に、整然と配置されています。

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工房の床は、土が敷きつめてあります。床に土があることで、鋳金の作業がしやすくなるのですが、実は、この土、作品の原型や鋳型をつくるための貴重な材料にもなります。壁には、これまでにつくられた挽型(ひきがた)が保存されています。

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作品づくりはまず、デッサンから始められます。下絵を描いて、作品の大きさ、かたち、表面にほどこす、波の文様などが決められます。

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ブリキの板を切って、挽型(ひきがた)をつくります。ブリキの板は2枚必要です。作品、たとえば壷ならその内側(口からのぞきこまないと見えない部分)のカーブを成形するためのものと、外側(作品表面)のカーブを成形するためのものの2枚です。

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最初に、作品の内側部分(完成時に空洞となる部分)が成形されます。この内側部分を、中子(なかご)と呼びますが、その芯の材料は、わらの縄です。わらの縄をつかうのは、あとで鋳型から引っ張りだすのに都合がいいからです。

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わらの芯ができました。わらはかなり堅く絞められています。ところで、挽型(ひきがた)のブリキ板との間に、まだ少し、すき間が見えますが、このすき間の部分に、土が塗られます。

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塗られる土は、砂と粘土汁を特殊な割合で配合したもので「真土」(まね)と呼ばれます。この真土でつくられた鋳型は、作品づくりが終了するたびに粉砕されます。ですから真土は何度も何度も再利用されるということになります。

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わらの周りに「真土」が塗られていきます。心棒をゆっくり回転させながら作業します。

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作業に必要なものが足もとに並べられています。左から「真土」(まね)、「埴汁」(はじる)、そして水です。「埴汁」は、粘土汁のことです。

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中子(なかご)の制作中には、時々乾燥のために加熱されます。この工程が繰り返されていくうちに、中子(なかご)は、挽型(ひきがた)のかたちにぴったりとあうようになっていきます。

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中子(なかご)に、脱蝋口(だつろうぐち)がつけられたあと墨汁が塗られます。脱蝋口とは、鋳型の焼成の時に蝋が外へ流れでる道です。

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中子(なかご)の完成です。

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次に、蝋型の「蝋」の部分の制作です。蝋は、もともと「蜜蝋」(みつろう)と松脂(まつやに)を配合してつくりました。齋藤さんは、伝統工芸の解釈に幅をもたせて、パラフィン蝋をつかいます。

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融かしたパラフィン蝋を、中子を回転させながら塗っていきます。作品が完成したときの金属部分の肉厚になるまでこれを続けます。

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これが、「蜜蝋」(みつろう)と松脂(まつやに)を混ぜた、ほんらいの「蝋」です。ゆっくりとお湯であたためます。

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「蝋」が柔らかくなったところで、少しの量をとり、パラフィン蝋の表面に付着させます。写真は、作品を飾る、波の文様をかたどっているところです。

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文様をつくるときには、作品の完成したすがたを頭の中で想像しながらかたちをととのえます。

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鋳型の中子(なかご)と、その周りのパラフィン蝋の層、そして模様部分が完成しました。

PHOTO: YASUDA TADASHI
2003/09/16 - 2003/09/21


製作著作
社団法人日本工芸会
2004