NIHON KOGEIKAI

伝統工芸なぞなぞ百科

NAZO-NAZO-024-D


鋳金(ちゅうきん)


齋藤 明(さいとうあきら)さんは、
鋳金(ちゅうきん)のわざで、
人間国宝(重要無形文化財保持者)に認定されました。

現在は東京都練馬区の工房でお仕事をされています。

まず、齋藤さんの作品をいくつか見てみましょう。

鋳金(ちゅうきん)のわざでつくられる作品の雰囲気を、
おおまかにつかんでください。

番号にカーソルをあわせると、
作品があらわれます。

ずっしりとした重厚感あふれる作品があらわれましたね。

作品名のところに、これまでにご紹介してきた合金名がでています。

2番の花器には「青銅」、5番の壷には「朧銀」(ろうぎん)とあります。

ところで、みなさんは同じかたちの作品があることに気づきましたか?

1番と2番は、まったく同じかたちをしています。
もう1度、よ〜く見くらべてください。
文様もまったく同じですよ。

ここが「鋳金」のわざのポイントです。

同じかたちの鋳型(いがた)のそれぞれに
異なった金属を融かして流しこむと、
まったくかたちのおなじ、しかし雰囲気の違う2つの作品ができるのです。

じつはこの「鋳金」の仕事をこなすのは、とても難しいことなのですが、
つぎは、このあたりを探ってみましょう。


齋藤さんの作品が
どのようなプロセスでつくられるのか
直接、齋藤さんご自身に教えていただきましょう。

そのまえに、ここで、ひとつの作品を
じっくり見ておきましょう。

今度は、作品を回転させて、鑑賞してみます。

4-10003-000-050-00497


ろうがたふきわけつぼ げん
蝋型吹分壺「弦」
2003年

上の写真をクリックしてください。
新しいウインドウがひらき、3D画像がご覧になれます。

壷をうまく回転できましたか?

作品の上の部分は黄金色をしていますね。
これは、真鍮(しんちゅう)です。
覚えていますか?そう、銅と亜鉛の合金ですね。

作品の下の部分は黒みがかった色をしていますが、
これは、ブロンズ(青銅)です。
そう、銅と錫の合金です。

ここからが重要です。

作品の首のあたりで、
真鍮(しんちゅう)の部分とブロンズ(青銅)の部分が
微妙な文様を描いて混じりあっています。

さあ、いったい、この作品は、
どのようにして、つくられたのでしょうか?
みなさん、ちょっと想像してみてください。

何となくわかったかな?

とても不思議ですよね?


作品制作の工程


齋藤さんの作品は、大きく3つの工程をへてつくられます。

今回は、上で紹介したような不思議な作品が
どのようにしてつくられるのか
実際に見せていただくことにしましょう。

なお、「鋳金」(ちゅうきん)の技法の中でも、
とくに、2種類の金属が微妙に混じりあい
不思議な景色をみせる作品をつくるわざを
「吹分」(ふきわけ)の技法といいます。

写真とビデオのアイコンをクリックすると、新しいウインドウがひらきます。

さあ、それでは、それぞれの工程を、じっくりと見てみましょう。

左の写真と説明、そして右のビデオという順で進んでください。

(1)

鋳型制作の工程(A)

作品の原型をつくる


写真と説明


ビデオと説明

(2)

鋳型制作の工程(B)

土をかぶせ鋳型をつくる


写真と説明


ビデオと説明

(3)

鋳込みの工程(A)

鋳型を焼き上げ、合金を準備する


写真と説明


ビデオと説明

(4)

鋳込みの工程(B)

融けた合金を鋳型に注ぎ込む


写真と説明


ビデオと説明

(5)

仕上げの工程

表面を美しくする

2004年8月下旬頃に
ご紹介できる予定です。

このようにして、齋藤さんの作品は仕上がります。

「鋳金」の技法のひとつ、「吹分」(ふきわけ)の技法は、
その工程をひとつずつ数えていくと数百に及ぶそうです。

これを完璧にこなすには、長年の経験が必要ですね。

まず、金属のことを、
隅から隅まで知っていなければなりません。

いろんな「合金」の性質、たとえば、
合金の融ける温度、温度による色の変化、
薬品による化学変化の具合、
そして、合金どうしがうまく混じりあうかどうかなどなど、
あらゆることに精通していなければなりません。

また、鋳型をつくるための素材、
たとえば、「砂」、「土」、「粘土」や「鑞」(ろう)など、
金属以外の物質の性質についても
熟知していなければ、しっかりとした作品はつくれないのです。

齋藤さんは、鋳金のすべての工程を
ひとりでこなされます。

ですから、どんなにがんばっても
1年に、10作品つくるのが精一杯だとのことです。

しかし、
「思いっきり仕事をしているときが、とても健康です!」と笑う
齋藤さんの制作意欲は、とどまるところを知りません。


(2003年9月撮影)

齋藤 明(さいとうあきら)さんの素晴らしいところは、
鋳金の難しい技術を縦横に駆使して
作品をつくっておられるところにあります。

しかし、さらにもう一歩進んで、
いつもに前向きに
現代感覚あふれる「品格のある作品」を
追求されつづけている点にあるといえるでしょう。

堅く冷たい金属であるのに
作品からは、人柄のにじみでた
優しい雰囲気が醸し出されています。


それでは、さいごに
齋藤 明(さいとうあきら)さんの最近の作品を鑑賞してみましょう!
(作品をクリックすると、大きい写真があらわれます)

齋藤 明(さいとうあきら)さんは、1920年、東京のお生まれ。

父の齋藤鏡明氏の指導により、伝統的な金属鋳造の技術を習得されました。

その後、高村豊周氏に師事し、技法や造形表現上の指導を受け、
1993年に、鋳金(ちゅうきん)の技術で、
重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。

齋藤さんは、長年の経験から生まれた豊かな知識と幅広い技法を生かし、
伝統的な技法を使いながらも
新鮮で現代感覚あふれる優品をつくられています。

作品の構想を練るために、
毎年1回は海外、とくに中近東へ取材旅行にでかけられるなど、
その精力的な創作姿勢は
若い人たちにも感動を与え続けています。

写真:日本伝統工芸展図録より


NAZO-NAZO

テーマ:「合金」は、ここまでです。

さいごまで読んでくれたみなさん、ありがとう!

ほかの「なぞなぞ」にチャレンジするときは、下をクリックしてください。


伝統工芸なぞなぞ百科の表紙へ


製作著作
社団法人日本工芸会
2004