NIHON KOGEIKAI

重要無形文化財「衣裳人形」伝承者養成研修会

講師:秋山信子(重要無形文化財保持者)

平成14年 9月20日更新



  油粘土で原型を作る

 国庫補助による平成12年度・平成13年度重要無形文化財「衣裳人形」伝承者養成研修会が、  重要無形文化財保持者の秋山信子先生を講師に迎えて行われた。

 期間:平成12年 6月 1日〜6月 3日/10月30日・31日(計5日間)
    平成13年 4月17日〜4月19日/11月15日・16日(計5日間)
 場所:ラブリーホール(河内長野市)

 受講生:6名(聴講生:3名・助手2名)

研修主題:聖徳太子を参考に、柄香炉を持つ童子立像を乾漆技法により制作する。

  内容:初年度 第一年次は油粘土で原型を作り、石膏で雌型を取り、乾漆で雄型を取る。
     次年度 第二年次は乾漆胎に其々工夫を凝らして衣裳をつける。


石膏で雌形を取る

 第一年次初日の六月一日は、ラブリーホールにて開講式が行われ、 研修会の進行計画及び実習のカリキュラムが発表された。

 研修主題は聖徳太子を参考に、柄香炉を持つ童子立像を参考の乾漆技法による制作。 秋山先生は、制作の心画がまえとして歴史的な背景を探ること、像がもつ象徴性の大事なことなどを お話になり、乾漆による仏像等の写真を配布された。また古くから仏像の制作に乾漆に取り入れた理由、乾漆の特徴、漆の種類、用具の扱い等、漆を扱う基本を説明された。


さびを塗る

(1)油粘土で原型を造る

像の芯になる木造の麻縄を八の地に巻く。頭部の木片を取り付け、油粘土にて全体像をつくる。


さびで麻布を貼り、はみ出た部分を取る

(2)石膏で雌型を取る

翌6月2日、頭、手を外し胴体部の側線上に幅1.5センチの切金を差し込む。全体が同じ厚みになるように注意しながら、切金がほぼ隠れるまで水で溶いた石膏をつける。前部分が固まりだしたら後部分も同様にする。半時間ほど置いてから切金をはずし、石膏型を開き、中の粘土を取り除く。


石膏を割る

(3)剥離剤を塗る

姫のりを水でうすく溶き、ベンガラを混ぜて(剥離剤)を作り二回塗る。(濃い味噌汁程度の濃さ)


  木片を入れ、型を合わせる

(4)さび・麻布で乾漆胎を作る

板の上で、砥の粉に水を加えて練り、その3分の1或いは2分の5の生漆をまぜて更に練る。これを(さび)という。一回目、刷毛でさびを塗り乾かす。指先でたたいて爪跡がつかなくなる程度になったら二回目、同じ分量で作ったさびを塗る。これで1ミリ半〜2ミリの厚さになる。三回目、砥の粉と生漆を同量ぐらいに練ったさびをうすく練り、ヘラで麻布を押さえつけて、その上に布が浮かないようにさびを塗っておく。麻布は適当な大きさに切り、隙間のないよう貼り雌型のふちから、はみださないように注意。ふちは心もち厚目にさびを塗る。これを四回ほど繰り返す。場合によっては厚みをつけるつけるために、砥の粉の代わりに地の粉を入れたさびを使うこともある。


観心寺の本尊開扉日の見学

(5)石膏を割り、木片を入れ、型を合わせる

同年10月30日、のみと金槌で石膏を割り、取り除く。ベンガラ剥離剤を洗い流す。首と手の差し込み部は削り、はめ込みができるように支えの木を入れておく。同量のうどん粉と漆をよく混ぜた(麦漆)を、型の前後の合わせ目に塗り、すりあわせるようにして接着させる。麻紐でしっかり縛りつけ、風にあたらないように乾かす。合わせ口が堅く接着したら、補強の為、麻布を漆で貼る。乾いたら全体に漆で薄い麻布を貼る。


できあがった乾漆胎の上に和紙や布を貼る

(6)さびで整形

翌31日、さびで型を整え、乾いたら耐水ペーパーで磨く。第2年次初日、4月17日。今回は千代田公民館に会場を移し、加飾の工程に入る。(色漆を作る)朱合漆と顔料とを練り、漆漉し紙で漉す。顔料の種類、漆の性質、乾漆粉の作り型などの説明を受ける。


胡粉を塗る

(7)乾漆粉の下塗り

乾漆胎に生漆を漆刷毛で2回塗る。漆が乾燥する為には湿度を必要とするので、加湿された室に入れ、8時間以上置く。

(8)文様の型作り

柿渋紙に文様を彫る。色漆で試し彫りをする。翌18日、秋山先生のお住まいの河内は太子のゆかりの地として名高く、漆を乾かしている合間を使い、河内長野市教育委員会の方のご案内で見学に出かける。歓心寺で本尊・国宝如意輪観音菩薩像を見学、近つ飛鳥博物館で「白鳳の美」展と常設展を観覧。そして聖徳太子の御廟を守る叡福寺を見学。聖徳太子絵図を見ながら、こらから取り掛かる衣裳の色や模様などに、大いに参考になった。

(9)布を貼る

翌19日、布貼りの為の下地をつくる。乾漆胎に石州半紙を貼り、地塗り胡分を塗る。木目込みの為の溝を堀り、布地の色目に合った地貼紙を貼る。その上に手織り麻布を木目込む。

(10)文様を付ける

型紙を使い、色漆を彫り込み文様を付け、更に金箔を施す。

(11)頭・手を作る

頭と手を桐塑により成型されたものに石州半紙を貼り、三千本膠で溶いた胡粉を、地塗り中塗りと塗り重ねる。胡粉仕上げの場合は、更に極上の上塗り胡粉を塗り重ねて仕上げる。紙貼り仕上げの場合は、土佐典具帖紙を澱粉のりで塗り重ねて仕上げる。

同年11月15日、16日再び会場はラブリーホール

(12)小道具作りと仕上げ

桐塑で成型した小道具と柄香炉に生漆を塗り金箔を押す。頭髪は、胡粉仕上げの場合は青墨に上塗り胡粉を少し加え、平筆で塗り重ねる。紙張りの場合は黒染めした典具帖紙を貼り重ねる。沓は、黒漆を塗ったものをタンポンで叩く(しぼ塗り)を施す。胎は、乾漆胎による仕上げ、或いは漆を塗った上から和紙や布を貼り仕上げるなど、様々な技法を自由にこなし、充実の十日間であった。

(井上揚彩 記)


社団法人日本工芸会会報より転載



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2008