NIHON KOGEIKAI

重要無形文化財「桐塑人形」伝承者養成研修会

講師:林 駒夫(重要無形文化財保持者)

平成22年 9月20日更新


要 旨

 このたびの研修を行うにあたり、テーマは「京舞妓」としました。誰もが知っている風俗ながら、作品の各処に伝統的な味を出す事が要求され、外見だけで済まない内容の厚さなどが、作品としての価値に直接かかわってくるからです。また、ただ形を追うだけでなく平凡な題材をどう自分の作品として手もとに引き寄せるかを勉強してほしいと考えました。 各受講者がそれぞれの個性の内で、テーマをどうこなしたかを見て頂きたいと思います。

                         重要無形文化財「桐塑人形」保持者
                                     林 駒夫


 国庫補助による平成21年度、22年度重要無形文化財「桐塑人形」伝承者養成研修会が重要無形文化財保持者の林駒夫氏を講師に迎えて行われた。

期 間 平成20年10月21日〜22日   (2日間)

         11月30日〜12月 2日(3日間)

    平成21年 4月1日〜2日     (2日間)

          5月15日       (1日間)

          7月16日〜17日   (2日間)

場 所 林駒夫自宅(京都市内)

受講生 6名(助手2名)

内 容 1年次   (1)京舞妓を木芯桐塑による下地制作

          (2)時代祭等女人風俗髪型研究、胡粉塗り

    2年次   (1)舞妓の髪飾り、付属品制作

          (2)祇園祭見学、紙張り、開眼


 第1年次(平成20年)

 10月21日 林駒夫先生自宅に集合し、研修内容の説明を受け、京都東本願寺別邸渉成園にて結髪師南登美子先生による舞妓の結髪、化粧、着付け実演見学。その後、林先生自宅工房で舞妓の雛形カツラを見ながら頭部を桐材にて彫刻し、桐塑(生麩粉にお湯を加え、粘った正麩糊と桐粉をまぜてつなぎに和紙をちぎり粘りを出したもの)を部分的に付け鼻や耳、髪の成形をする。舞妓の髪はカツラではなく地毛で結ってあるので、生え際の違いや根の位置の高さに違いがあり、思っていたよりかなり低い位置に根が立てられていた。また髪結いの人により独特の根を立てる工夫をしていると南先生より講義を受けた。

10月22日 時代祭の当日、京都御苑において各時代祭の女人達の風俗を林先生の解説により衣装髪型等を見学。工房に戻り木芯桐塑による舞妓の季節別六種の姿を制作。大まかな動きを桐材で彫刻して細かな部分を桐塑で成形。襟、袖、裾などは張り子紙で作り、その上を引きの強い石州紙などで張る。六人それぞれが見世出し、都をどり、桜、祇園祭、時雨、雪と六つの季節を舞妓の姿で表現する。 11月30日 南登美子先生宅にて舞妓の髪型、(舞妓が襟替え前の一週間だけに結う髪型)の実技見学。その後、滋賀県守山市の佐川美術館に行き「佐藤忠良展」を見て、人体骨格の勉強会、そして楽吉左衛門館を見学。

12月1日 南座にて歌舞伎の「十二月顔見世興行」の祇園舞妓総見に同席。その後、林先生自宅工房に戻り各自進めて来た桐塑下地を見て頂き、次に地塗り作業に入る。胡粉塗り前の下地作り、桐塑の生地に石州紙等を水切り、もしくは手でちぎり毛羽立ちを重ねながら張り込む。地塗り胡粉はまず乳鉢に胡粉と溶かした膠を加え、耳たぶくらいの柔らかさになるまで入れ、団子にして乳鉢に叩き付け手で棒状になるように練る。その固まりの胡粉を手ですりあわせ細い麺のように伸ばし乳鉢に落として行き、そこにお湯を加え胡粉を溶いて行く。出来た地塗り胡粉を刷毛で桐塑の生地に摺り込むように塗り、生地締めをして、乾いては塗りを繰り返して地を塗り上げる。

12月2日 前日、胡粉を塗り重ね自然乾燥した作品をサンドペーパーで粗磨きをし、埋まっている部分を彫刻刀で彫り出して行く。ほぼ形が決まった時点で襟や袖、裾、だらりの帯などを張り子紙で作り加え、成形した上に石州半紙を張り込む。各々が初めて使う材料と技術に戸惑いながらも、先生の指導のもと初年度の研修は終了した。


 第2年次

 4月1日 初年度に続き、人形に和紙で地張りや木目込みの下拵えをし、同時に団扇や扇子、髪飾り等、各自の人形にあった小道具や先笄や割しのぶ、お福、勝山、奴島田に付ける簪や櫛を、季節毎の約束に則り小さく和紙や金箔を使い作った。午後にパナソニック社迎賓館真々庵見学。夕刻に先生の工房に戻り再度、簪の試作を見ながら先生に批評をして頂き調整を行った。

4月2日 粗磨きした胡粉塗りの人形を中塗り、置き上げ胡粉で置き上げをし、乾燥をするその間を利用して祇園歌舞練場に行き「都をどり」の見学、踊り子に楽屋口まで出て来てもらい姿を間近に見て取材した。工房に戻り乾燥の済んだ後の人形を磨き上げ、彫刻刀で「さらえ」まで進めた。 5月15日 襟付けや袖回りの貼り込み。ここは極めて重要なところで着物の薄さや柔らかさ、そして刺?や金襴の豪華さを表現する上で、手際の良さが左右するところである。実際の半襟や帯の豪華な質感を省くことなく作業する事でより良いものに仕上がるのである。その後急ぎ先生宅から近くの京都御苑に向かい、京都三大祭の一つ葵祭を見学。工房に戻り、未だ途中だが作品を撮影し、ついで敷台の採寸をした。

7月16日 京都祇園祭。舞妓が結う祭り用の頭「勝山」や絽や紗の夏の正装を見学。先生宅に戻り最終の仕上げに入り、衣装、襟、帯付属品等の最終調整をした。

7月17日 最終日、開眼をして簪、櫛、団扇等の付属品を取り付け敷台に載せ完成である。作品を先生宅の部屋に飾り、それぞれ林先生から講評を受けた。

 二年間に及ぶ研修会により様々な事を学んだが、それらの日々が今後の作品に大きな進化をもたらすであろう。伝統の力の大切さを感じつつ研修を終えた。(中村信喬 記)

   

 第57回 日本伝統工芸展図録より転載



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2010