NIHON KOGEIKAI

重要無形文化財「鋳金」伝承者養成研修会

講師:齋藤 明(重要無形文化財保持者)

平成17年 9月27日更新


 国庫補助による平成15年度、16年度重要無形文化財「鋳金」伝承者育成研修会が重要無形文化財保持者の齋藤明氏を講師に迎えて行われた。

期間:平成15年9月16日〜20日及び26日・27日(7日間)
   平成16年8月30日〜9月3日(5日間)    

場所:齋藤 明 鋳金工房(東京都練馬区)

受講生:8名(日本工芸会金工部会正会員)

内容:「蝋型鋳造による花器」の制作


 原図面

第1年次 回転体による原型の制作、鋳型制作、鋳型の焼成、鋳込み、中子落としまで。第2年次は仕上げ加工、表面処理、着色、完成までの全工程を研修することになった。

 中子の完成 挽きの開始

9月16日 作品の制作工程に関する概要の説明を受け早速実習に入った。研修指導の方法は基本的に、まず、工程ごとに齋藤講師が実際に制作実演し、次に研修生が実習を行っていく方法をとった。各自、原図面をもとに挽き型板を制作し鳥目箱に取り付け、次に芯棒になる丸棒を固定してこれに荒縄を巻きつけ1日目の工程を終了した。

 挽きの指導

9月17日 研修生各自縄繰りが完成。その上に中土をつけ始める。その後、炭火で乾燥させ順次挽きまわし再度乾燥させ、モロメ土を付け再び乾燥、さらに細かい珪砂入りの紙土付けを行って挽き揚げる。

9月18日 完全に乾燥した中型表面をさらに硬化させるため、ラックニスを塗布していく。はじめは薄めのものから徐々に濃いものにかけて3回から4回塗り重ねる。研修生各自も実習に入る。続いて次の工程であるパラピンの溶解準備にかかり、いよいよ挽きの開始である。この挽きの作業は最も重要な工程の内のひとつである。講師によりその注意事項の説明があり模範が示され、その後各自がパラピンを溶解、挽きに取り掛かり、原型の素地部分を完成させた。次に、この原型に波形をした文様部を蜜によってレリーフ表現を行った。

 鋳型制作の指導

9月19日 原型文様部の制作を継続し完成させた。型持(ルビ:かたもち)の設定、幅置(ルビ:はばき)部の整理をおこない、肌土・紙土付けを順次行い焼真土で水分をすわせ硬化させた後、中土付けを行う。再度全体を硬化させ、針金を網状に巻きつけ補強し外側にも荒土を付け重ねていく。さらに全体を乾燥させるため真土砂を全体にかける。

 鋳型の制作

9月20日 硬化した鋳型から芯棒を抜き取り、巻きつけてあった荒縄も順次取りだして中子内部を中空にした後、芯棒の穴をうめ、底部全体の修整を完了する。鋳型全体の凹凸を修整、湯道用のを準備して湯道及び堰(ルビ:せき)付けの実演の後、全員実習に移った。さらにこの湯道部分にも鋳型土を付け、全体に荒土を付け重ねて湯口と掛け堰部分を整え鋳型の完成である。24日は鋳型焼成窯の構築と脱を行うため研修生の有志とお手伝いの方々が集まり作業が進められた。完成した焼成窯に炭火を入れ夕刻より徐々に加熱し、午後9時脱を終わる。

 合金の溶解

9月26日 いよいよ鋳込みの日である。齋藤講師とお手伝いの方によって午前1時より鋳型の焼成が開始された。午前7時45分焼成が終了、焼成時間6時間45分。8時30分溶解の開始。吹き分け用に唐金20キロに金16グラムを添加、黄銅20キロが用意され溶解炉2箇所で同時に溶解された。鋳型焼成窯を解体し、吹き分け8点分を窯の外に出す。12時15分吹き分けの鋳込みか終了。続いて朱銅2点分として唐金60%に純銅40%の合金を溶解。研修生各自の鋳型への鋳込みを体験し無事作業を終了した。鋳込み後鋳型の冷却を待ち割り出しを始める。全員成功である。

 鋳込み

9月27日 全員で片付けの後、仕上げの手順について説明があり、湯道の切り落としと中子落としに取り掛かった。研修生各自感想を述べ、作業工程に関する質疑応答の後今年度の研修を終了した。

第2年次

 鋳込み後の講評風景

8月30日 各自、荒仕上げを行った作品を持ち寄る。5日間の日程の説明の後、全作品の講評と切下(ルビ:きさ)げ掛けの実演があり仕上げの工程に入る。

 仕上げ研磨の完成

8月31日 切下げ掛け研磨、ペーパー研磨を継続。笄(ルビ:こうがい)部分の穴、ゴミ巣の部分に各自嵌金(ルビ:はめがね)を行う。特に吹き分け作品の嵌め金は早付け液を付けながら慎重に判断して行った。

9月1日 全作品のうち唐金で鋳造した作品2点の朱銅焼きを始め午前中に終了、並行して吹き分けの作品についてさらに細かく研磨するため、胴摺(ルビ:どうず)り、炭研ぎを念入りに行う。朱銅の作品については砂胴摺りの後、荒縄を用いて十分に磨き上げた。

 煮上げ着色の様子

9月2日 煮上げ着色の作業に入る。午前中は煮色液である緑青と硫酸銅を配合した溶液を作り色揚げ工程に必要なさまざまな容器、用具、用材を作業の手順に沿って手際よく配置していく。まず、吹き分け3点分の色揚げから同時に開始する。夕刻までに吹き分け作品分6点及び朱銅作品2点の下色付けをすべて完了した。

 完成作品

9月3日 色揚げ作業を継続。朱銅の鉄漿(ルビ:おはぐろ)焼付け作業に取り掛かる。炭火により回数を重ね繰り返し鉄漿を焼き付けていく。最終段階としての色止め作業としてザボンエナメルと酢酸アミルの溶液を掛け流し、すべての工程を終了。全員で後片付けの後全体の講評があり、2年間、延べ12日間にわたる研修に対して感謝の意と今後の抱負を述べて終了とした。

(戸津圭之介 記)

第52回 日本伝統工芸展図録より転載



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2008